
2020年10月にデビュー30周年を迎えたシンガーソングライターの槇原敬之。
彼の楽曲を聴き始めて30年。その魅力と当時のパーソナルな思い出と共にまとめていきたい。
槇原敬之のプロフィール
1968年、大阪・高槻市生まれ。電気屋の息子として生まれ、母にせかんでピアノを買ってもらい、幼い頃からピアノに親しむ。
高校生の時にNHK-FMでのラジオ番組「サウンドストリート」で「C.M.C」としてデモテープを紹介、パーソナリティーの坂本龍一氏に絶賛される。のちにまとめられた楽曲集が「デモテープ1」としてCD発売された。
その後、「AXIA MUSIC AUDITION ’89」で「NG」がグランプリ & 一万人審査員賞をW受賞。
1990年10月25日シングル「NG」とアルバム「君が笑うとき、君の胸が痛まないように」でデビュー。
従兄弟にはSCANCHI率いるローリー寺西。デビュー曲「NG」のサポートギタリストだった。
ちなみにローリー寺西のアマチュア時代のバンド「すかんち」の「スカンチンロールショー」(オリジナル版は1988年)が2007年に限定3,000枚で再販された時に、槇原敬之はキーボードとコーラスをこっそりサポートをしていた。
代表作には映画「就職戦前異常なし」のテーマソングである「どんなときも。」やNTT CMソング「遠く遠く」、SMAPに提供した「世界にひとつだけの花」がある。
詞を先に書き、メロティを後からつける手法をとっている。
最初の数枚のアルバムは恋愛テーマが多かったが、次第に作風は変化をとげる。
1999年に覚せい剤所持取締法違反で現行犯逮捕(執行猶予3年)されて以来、作風が激変。
心の葛藤や日常の何気ない気付きから着想をえたライフソングが主流になっている。
デビュー30周年にあたる2020年2月13日、午後4時44分に覚せい剤取締法違反容疑(所持)で警視庁に自宅マンションで逮捕された。(2020年3月、東京地裁は槇原敬之被告(51)に懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。)
今後彼の活動がどうなるか不明だが、知り得る限りで追っていきたい。
槇原敬之 12th アルバム「本日ハ晴天ナリ」の発売当時の思い出
日本で初のワールドカップも開催され、調子に乗って社会人サッカー漬けな日々を暮らしていた。
結果的に何カ所か骨折したり、グロインペイン症候群になったりして散々な年であった。
2002年の出来事(個人的に興味のあったもの)
■ FIFAワールドカップ 日韓大会開催
■ MicrosoftよりXbox発売
■ 多摩川にアザラシのタマちゃんが漂流
槇原敬之 12th アルバム「本日ハ晴天ナリ」個人的楽曲レビュー
12th アルバム「本日ハ晴天ナリ」は10th アルバム「太陽」、11th アルバム「Home Sweet Home」に続く復帰3部作だ。
復帰後に「意味のある歌を歌い続けたい」と語っていた槇原氏。
初期から聴き続けている人にとっては方向性が変わってしまったので、戸惑いは否めないが、メロディーのポップさや、歌詞展開の幅広さは健在だ。
ひとつの仮設をたててみた。
曲順で
①胎内 ②誕生 ③華やかさ ④出会い ⑤別れ ⑥共感
⑦試練 ⑧旅立ち ⑨自立 ⑩一時休憩 ⑪達観 ⑫老齢の穏やかな生活
を照らし合わせすことができる。
誰かの手を借りながらも生きていることに感謝する。
このアルバムは人生の縮図である ー と、そう感じさせるアルバムだ。
01 Amazing Grace
言わずと知れた名曲のカバー。
出だしのデジタル加工されたサウンドがこれから生まれる世界へ印象づける。
当時の槇原氏の心境がこんな感じだったのだろう。
02 Wow
キャッチーなメロディが奏でる出産お祝いソング。
SMAPに提供予定だった楽曲。結果的にメンバー全員から同意が得られず不採用に。
この後締め切り間際に作った「世界にひとつだけの花」が採用。
メンバーもなかなか気に入ってる様子でTV番組でコラボして歌っていた。
♪wow! 僕一人だけ 感じられるような幸せなんて もう僕には要らない♪
3枚目アルバム「君は僕の宝物」に通じるパワーワードのオンパレード。
子どもが生まれるとこのフレーズがじわじわクル。w
03 24hr Supermarket
テッテッテッ-レ、テーレテテテ♪ 80年代なこの軽快なイントロだけで酒が飲めるw
間奏にはYMOの「体操」のフレーズも。
♪僕が休みの日に君の仕事の日が続く 君が休みの日には僕の仕事の入っている日
そんな日々がしばらく続いていくうちに 夏は終わりブランケットが冬物に替わった♪
通常サビの部分にパワーワードを持ってくるのだが、この楽曲では出だしから槇原節全開。
季節の移ろいの表現をファッションが好きな槇原氏ならでは。
04 縁
みどりちゃうよ。えんのほうwwww
ポケットの中にはビスケットがひとつの歌を思い出した。
♪神様 こんな縁を僕にくれてありがとう
辛いことも二人でなら 頑張っていけるんです
神様 こんな縁を僕にくれてありがとう
嬉しいことが何倍も 嬉しいと感じながら生きていけるんです♪
名犬ジョリーのエンディングソング「ふたりで半分こ」を思い出させる歌詞。
05 花火の夜
サンバのメロディーにのって離れた人への想いを綴る楽曲。
花火の使い方が印象的。
♪どんな人でもこの場所笑顔になれる花火の夜をとても好きだと言っていた君を今も思い出すよ♪
この歌詞から煙と汗がプンプン感じるのは気のせい?
エロス!
06 君の声を待つ夜
ファーストでは僕・僕・僕・僕だったのが、ついに他人を思いやれるようになるまで成長。
久しぶりに登場した泣きソング。
♪あのとき熱を出した僕に君がしてくれたように早くよくなる事だけを心から願えている♪
わかり合えることは難しいが、わかろうとする気持ちは大事だと彼は伝えている。
「槇原敬之から学ぶ人生」みたいな本に載っていそう(実在はしていない)。
07 これはただの例え話じゃない
アルバムが発売されるまえのシングル。
こんな重いテーマなのになぜシングル why?
♪大切な人を傷つけたいと思うわけなどないと誰もが言う
傷つけたくないとただ思うだけでは守れないという事を思い知るその時までは♪
やってしまったことへの懺悔。
重いテーマポップに描くこの手の曲は大好きだ。クセになる。
開き直りにも聴こえる。www
08 さよなら小さな街
ピチカートファイブの野宮真貴氏に提供した楽曲をセルフカバー。
槇原版「書を捨てよ、街に出よう」
世界各国で活躍する野宮氏のために描かれた世界。
野宮版はワクワクする感じに聞こえ、槇原版は悲痛な感じ。
槇原版はセルフカバー。悪くないんだけどやはり野宮オリジナルに比べるとリトル違和感ある。
楽曲提供したものはいくつかあり、セルフカバーはこれが最初のもの。
シックな野宮版に対して槇原版はサウンドをダイナミックに仕上げている。
♪小さな街の片隅で小さな事にくよくよしてるなら大きな街へ勇気を出して君も飛び込んでみればいい♪
失敗しても死ななければオールオッケー。
やらぬ後悔よりやってからの後悔のほうが大事。
最初の一歩を踏み出すために背中を押すソング系。
悩み事があった時に聞きたい楽曲。
09 I got a friend
曲名はキャロル・キングの「You’ve Got a Friend」からインスピレーションを得たと思われる。
You’ve Got a Friend〜♪ のメロディがまんま一緒だ。
友だちという概念はどんなことなのかと考えさせるミディアムナンバー。
何回も裏切られた経験をもつ槇原ならでは。
MILK 第2章とも言える。
♪仲良くいたいという理由で心にうそを付くのなら一人でも正直でいる方がマシと君が言っていたのが解る♪
世界を敵に回しても味方が1人だけでもいれば人生オールオッケーだ。
NTT東日本CM曲にも起用された。
10 雨ニモ負ケズ(Album Version)
宮澤賢治死後、遺作メモから発見された「雨ニモマケズ / 風ニモマケズ」よりインスパイア。
シンギング・ラップ調のリズムが心地よい。
♪「あーそうさ、そのとおりさ」と開き直りそうになって心に不安が襲ってくる
本当はどんな自分になりたいか問い正すべき人は他の誰でもない 誰でもない この自分だけ♪
自分の内面を厳しく内観した楽曲。
理想の生き方をできる、できないは別としてそうありたい強がりソング。
11 本日ハ晴天ナリ
思いこみやしがらみからの解放ソング。
♪君が笑うとき君の胸が痛まないように♪
ファーストアルバムのタイトルから引用。
終わり際にアメイジンググレイスのメロディも顔を出す。
最初に戻り繰り返すための布石か。伏線回収とも言える。
♪本日モ晴天ナリ例エ雨降リデモ晴天ナリ
この世界の片隅で今日も生きている 君の心に雨が降らないように 君が笑うとき君の胸が痛まないように♪
「ハ」が「モ」に変わるあたりが槇原流。
ポエムとしても秀逸。マンションポエムをお願いしたい。W
この歌詞だけでご飯1.5倍は食える。
12 Turtle Walk(Album Version)
カントリー調の軽快なナンバー。
中日・阪神の星野監督へのオマージュ曲。
出だし部分から同氏の名曲「どんなときも。」のアンサーソングとも言える。
♪見た目は同じ道を歩いていたとしても人はそれぞれ心が向かう場所を目指すんだ
誰かと競争をして無理に走ったとしても疲れてしまうだけさ これはレースじゃない♪
細く、長く地味な人生もあるということに気づかせてくれた楽曲。
槇原敬之 12th アルバム「本日ハ晴天ナリ」のまとめ
1曲1曲じっくりというより、全体を通して聴くと槇原氏の伝えたいメッセージがジワジワくる。
20代で持つトガリ具合がなくなり、抑揚が抑えられたアルバムだ。
※2021年3月現在 個人の感想