
「本とワインは、よく似ている」
どちらもその土地の風土や人の想い、そして時間が育てるものだからだ。
そんな”本とワインの相性の良さ”をテーマに開催されたのが、勝沼図書館の人気イベント「産地ワインの夕べ」。
図書館が誇る膨大なブドウ・ワイン資料に触れながら、造り手の話を直接聞き、実際にそのワインを味わう。
知識と体験がひとつになる、全国的にも珍しいイベントのひとつ。
毎年県外からも多くのワインファンが訪れ、五感で楽しめるイベントとして高い人気を集めている。
勝沼図書館「産地ワインの夕べ」概要
- 日時:2026年2月22日(日)18:15〜20:15
- 会場:甲州市立勝沼図書館
- 定員:50名
- 参加費:無料(事前予約制)
参加ワイナリー
- 旭洋酒(山梨市小原東)
- 岩崎醸造(甲州市勝沼町)
- 錦城葡萄酒(甲州市勝沼町)
- セブンシダーズワイナリー(富士河口湖町)
- ドメーヌ・オヤマダ(甲州市勝沼町)
- 原茂ワイン(甲州市勝沼町)
図書館ならではの質問で見えてきた、醸造家の素顔
このイベントが面白い理由は、単なる山梨ワインの試飲会ではないこと。
図書館らしく、事前アンケートをもとに醸造家それぞれの価値観や人柄を掘り下げていく。
質問は次の4つ。
- 現在取り組んでいること
- 好きな食べ物
- 「これ以上ない」と思えるお気に入りのワイン
- もし予算無制限でワインイベントを開くなら、どこで開催したいか
さらに、お気に入りの一冊も紹介していただいた。
ワイン造りだけでなく、食や文化、人生観まで垣間見える内容で、それぞれの個性が実によく表れていた。
旭洋酒

現在は剪定作業と枝焼きを行い、その灰を陶芸家へ送り「ブドウ灰釉ゴブレット」の制作にも活用。
好きな食べ物は、テンホウ×松尾商店の野沢菜餃子。
印象に残ったワインは「domaine BOHN Sylvaner vieille vigne 2023」。
夢のイベント会場は、富士山を望む自社畑。好きなアーティストを招いたライブを開きたいとのこと。
好きな本
- 『ヨブ記』
- 『生成』(ミッシェル・セール)
- 『鉄コン筋クリート』(松本大洋)
岩崎醸造

新設ワイナリーやワイン愛好家への指導を行うなど、後進育成にも力を注いでいる。
好きな料理は、妻の角煮と家族で囲む手巻き寿司。
お気に入りのワインは、赤が「オーパス・ワン2013」、白が「エティエンヌ・ソゼ ピュリニー・モンラッシェ」。
予算無制限なら、自社ワイナリーをリフォームしてイベントを開催したいそう。
好きな本
- 『サイレント・ガーデン』(竹光徹)
- 『ラブレーの子供たち』(四方田文彦)
錦城葡萄酒

栽培担当として日々畑に向き合っている。
好きな食べ物はペペロンチーノ。
印象深いワインはドメーヌ・コアペ。
開催したい場所はニュージーランド。
ラグビー文化に根付く「アフターマッチファンクション」のように、お互いを称え合いながら甲州ワインとニュージーランドワインを楽しみたいという答えが印象的だった。
好きな本
- 『風が強く吹いている』(三浦しをん)
セブンシダーズワイナリー

畑の拡張、スパークリングワインのデゴルジュマン、樽熟成ワインの管理、瓶詰めなど、多忙な毎日。
好きな食べ物はチーズとナッツ。
思い出のワインはアルザスのグラン・クリュやシャトー・オーゾンヌ。
夢のイベントはスペイン・サンセバスチャンやフランス・リヨンで、日本人シェフを招いたメーカーズディナー。
好きな本
- 『サーバントリーダーシップ入門』(池田守男)
ドメーヌ・オヤマダ

ブドウとワイン造りだけでなく、14羽の養鶏や米・野菜づくりまで手掛けている。
好きな食べ物はカツオとフキノトウ。
好きなワインはクロード・クルトワ「ラシーヌ」。
イベントについては「自分一人ではやりません。段取りしてもらえるなら渋々」と笑いを誘う回答。
好きな本
- 『風土 人間学的考察』(和辻哲郎)
原茂ワイン

勝沼ワイナリークラブで、甲州種の品質向上を目指した栽培活動に携わっている。
好きな料理は麻婆豆腐。
「人生最高の一本には、まだ出会えていない」という言葉も印象的。
もし開催するならアイルランド。
好きな本
- 『人間は笑う葦である』(土屋賢二)
造り手の言葉を聞きながら味わう12種類(+1)のワイン
醸造家が目の前にいるのだから、やはり飲みたくなるもの。
それぞれの山梨ワインについて、造り手自身が特徴やこだわりを語ってくれる贅沢なテイスティングタイム。
今回は白・赤合わせて12種類が提供され、ちょっとしたワイン会以上の充実した内容だった。
提供されたワイン
旭洋酒

- ソレイユ千野甲州2024F
- それいゆ ピノ・ノワール2023「きろく」
岩崎醸造

- マスカットベーリーAクラレット(新発売されたもの)
- シャトー・ホンジョー 甲州かもし「常盤に燃る」
- シャトー・ホンジョー フィールド・ブレンド
錦城葡萄酒

- 東雲(しののめ)
- 小佐手 マスカット・ベーリーA
セブンシダーズワイナリー

- KOSHU BARREL FERMENTED 2024
- FUTAHASHIRA ROUGE 2024
ドメーヌ・オヤマダ

- 祝 スパークリング
- 日向
原茂ワイン

- 原茂甲州 直農園 荒井・小佐手小路2022
- 原茂メルロ 自家農園 長遠寺
ワインに寄り添う一皿

料理は野菜ソムリエ・プロの雨宮まゆみ氏によるもの。
今回のテーマは「スタッフドバゲット」。
約40cmのバゲットやコッペパンをくり抜き、具材を詰めるだけという家庭でも作りやすいレシピだ。
用意されたのは3種類。
- クリームチーズ・ツナ・野菜
- アメミヤ風ポテトサラダ
- ボロネーゼ風
シンプルながら山梨ワインとの相性は抜群で、参加者にも好評だった。
参加して感じたこと
このイベントの魅力は、山梨ワインを飲むことだけではない。
造り手の考え方や人柄、読書歴、好きな料理まで知ることで、一杯のワインがより立体的に感じられた。
「どんな人が、どんな想いで造っているのか」
それを知って飲む山梨ワインは、味わいまで変わるように感じた。
一方で、終了時間が遅く公共交通機関が少ないため、帰路は図書館職員の方が駅まで送迎していただいた。
参加者には大変ありがたい配慮だが、勝沼エリア全体として夜間交通の充実は今後の観光課題の一つと言えるだろう。
勝沼図書館について
1996年に開館した勝沼図書館は、日本有数の「ブドウとワイン専門資料」を所蔵する公共図書館。
一般公開・貸出可能な関連資料は3万点以上。
毎年開催される「ブドウとワインの資料展」をはじめ、地域のワイン文化を広く発信する拠点として、
多くのワインファンや研究者に親しまれている。
開館時間:9:00〜17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
電話:0553-44-3746
住所:山梨県甲州市勝沼町下岩崎1034-1
おまけ:ウエルカムハープの演奏の様子

松村あや & 西島京子氏によるイベント開催前のミニハープ演奏。
※本記事は2026年2月時点のイベント参加に基づく個人の感想