盆地の風景:サントリー白州蒸溜所ものづくりツアー 参加レポート

コロナ禍の影響で一時休止していたツアーである白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ(有料)が2024年9月20日(金)から再開した。
そのタイミングで2か月ほど前から友人夫婦が申し込みをしていた。
結果見事当選! ありがたく同行させていただいた。
その時の様子をレポートしたい。

https://reserve.suntory.co.jp/regist/is?SMPFORM=ngoe-lenetb-550fe19094a7fbbfd41c49a7ce9cc871&courseNo=00361&eventDate=

サントリー白州蒸溜所ものづくりツアーの概要

参加日:2024年8月4日(日)
参加費;3,000円(税込)

専用無料バスで移動

サントリー白州蒸溜所へ行く専用無料バス
サントリー白州蒸溜所へ行く専用無料バス

現地集合だと車でしか行けないため、専用無料バスを利用。

場所は小淵沢駅前にあるサントリー白州蒸溜所行き専用のバス停。
日曜だったが、午前中の時間帯だったために搭乗者はそれほど多くなかった。

遊歩道をぬけて

現地到着。
受付を済ませて、蒸溜所ツアーのビジターセンターまで10分ほど徒歩で向かう。
途中の遊歩道・バードサンクチュアリは普段の喧騒を忘れさせてくれる。

バード・サンクチュアリ

目的地であるウイスキー博物館(見学ツアー集合場所)まで野鳥が集まる池と様々な木々、草花が愉しめる。
10分以上歩いたのでスニーカーのほうが楽でオススメだ。



1973年に白州蒸溜所の完成と同時に誕生したバード・サンクチュアリは森林公園工場のシンボル。
今日、鳥に起きることは、明日、人間に起きること。

バード・サンクチュアリはサントリー愛鳥活動の取り組みのひとつでもある。

ウイスキー博物館

ウイスキー博物館
ウイスキー博物館

集合場所であるウイスキー博物館に到着。
シングルモルトウイスキー「白秋」の歩みや、蒸溜所とその環境について紹介している。

初期のポットスチル
初期のポットスチル

初期のポットスチル(蒸留窯)がお出迎え。

ウイスキー歴史館

ツアー開始までしばらく時間があったので、併設されているウイスキーの歴史についてのパネルを見学。

上に上がるとウイスキーの神秘と科学についての説明パネルがあった。

ものづくりツアー開始

ウイスキー博物館のものづくりツアー
ウイスキー博物館のものづくりツアー

時間となったのでツアー開始。
どこからともなくわらわらと参加者が集まりだす。

まずは最初に注意事項の説明など。

ツアー時間は約120分。
トイレタイムはないので事前に行くとよい。

他の蒸溜所との違い

白州蒸溜所が他の蒸溜所と一線を画す点は、その立地と自然環境に大きく起因している。

白州は「森の蒸溜所」と呼ばれるように、南アルプスの豊かな森林と清冽な水に恵まれた場所で造られるため、周囲の微気候や空気中の樹木・植物から漂う香りが、ウイスキーの熟成過程に微妙な影響を与え、ほのかに草やミントを思わせるフレッシュなニュアンスが生まれる。
これにより、都会的な環境下で製造される蒸溜所とは異なる、独特のテロワール(風土)がウイスキー自体に反映される。

また、白州蒸溜所は伝統的な技法へのこだわりも特徴のひとつだ。
たとえば、自然の恵みである軟水を丹念に利用し、木桶発酵や複数のポットスチルを使って細心の注意を払いながら蒸溜が行われる。
この工程で生み出される様々なフラクションのバランスが、白州ならではの滑らかでありながら複雑な風味を形成。

これらの違いは、単に製品の味わいだけでなく、白州蒸溜所でウイスキーづくりが担う理念や職人技の表現、そして地域に根ざした文化とも密接に結びついている。

白州蒸溜所でのウイスキーづくりツアーの様子

サントリー白州蒸留所内に移動するバス
サントリー白州蒸留所内に移動するバス

説明終了後、再びバスで工場現場へ向かう。今回は所内なのでさほど時間はかからず。

白州蒸溜所でのウイスキーづくりは、自然環境と伝統技術の見事な調和によって紡がれるアート。
各工程がウイスキーに独特の個性と奥深い味わいを与えるため、細部に至るまでこだわり抜かれている。

  1. 水の選定と利用
    白州蒸溜所は南アルプスのふもとに位置しており、深い花崗岩層を通じてろ過された軟水を使用。
    この清らかな水は、ウイスキーのベースとしてすっきりとした風味とバランスを生み出す重要な要素となっている。
  2. 発酵プロセス
    伝統的な木桶発酵が採用され、発酵タンク内での微生物の働きが丁寧に管理。
    木の温もりと室内環境が与える微妙な酸化作用により、酵母が生成する独自の香り成分がウイスキーに豊かな深みをもたらす。
    この工程は、ウイスキーづくりにおける「命」とも言える大切なステップだ。
  3. 蒸溜技術
    白州では、形状やサイズが異なる複数のポットスチルが巧みに使用され、各フラクション(ヘッド、ハート、テイルズ)を丁寧に分けながら蒸溜が進められる。
    これにより、ウイスキー固有のフレッシュな香りと、ほのかなスモーキーさ、時には複雑な香辛料や果実のニュアンスが引き出される。
  4. 樽熟成
    蒸溜された原酒は、アメリカンホワイトオークのバーボン樽やその他特別な樽でじっくりと熟成。
    木樽からは、木の芳香、バニラ、スパイスや軽やかなトースト香といった風味がウイスキーに移り、時間をかけることで奥行きのある味わいが形成。
    熟成室の環境も、四季折々の気候変動が微妙に風味に影響を与える要因となっており、これが白州独自の「森のウイスキー」としてのキャラクターを際立たせている。
  5. 自然との一体感
    「森の蒸溜所」とも称される白州では、周囲の森林や自然の静けさが生産工程全体に影響。
    日々変化する気候や湿度、さらには森の香りまでが、各段階の微妙な調整に関与し、その結果として生み出されるウイスキーは、一杯ごとに自然の息吹を感じさせる逸品となっている。

このように、白州蒸溜所でのウイスキーづくりは、厳選された水、伝統的な発酵・蒸溜技法、そして環境との絶妙なハーモニーが融合することで、他にはない独自の風味が生み出されるプロセスがある。

モルトウイスキー「白州」ができあがるまで

プロジェクションマッピングによるウイスキーづくりの過程

サントリーシングルモルトウイスキー白州ができあがるまでのプロジェクションマッピング
サントリーシングルモルトウイスキー白州ができあがるまでのプロジェクションマッピング

おねいさんによる説明がなされた。

0 原料

白州蒸溜所のモルトウイスキーの原料
白州蒸溜所のモルトウイスキーの原料

モルトウイスキーの原料は、水と麦芽と酵母。
仕込み水に南アルプスの山々を潜り抜けてきた地下天然水を使用。
麦芽の原料は二条大麦。
まずは大麦を適度に発芽させ、内部に酵素を蓄えた大麦麦芽を生成。

麦芽はパン、麦茶の香りがした。
ピート(泥の炭)で燻した麦芽は燻製のようなスモーキーな香りに包まれていた。

1.仕込

白州蒸溜所のモルトウイスキーの仕込
白州蒸溜所のモルトウイスキーの仕込

麦芽と温水を混ぜて、麦汁をつくる

2.発酵

白州蒸溜所のモルトウイスキーの発酵
白州蒸溜所のモルトウイスキーの発酵

麦汁を酵母が分解し、もろみが生まれる

3.蒸留

白州蒸溜所のモルトウイスキーの蒸留
白州蒸溜所のモルトウイスキーの蒸留

もろみは2度の蒸留を経てニューポット(ウイスキーの赤ちゃん:蒸留を終えたばかりの熟成前の原酒)となる。

4.貯蔵

白州蒸溜所のモルトウイスキーの貯蔵
白州蒸溜所のモルトウイスキーの貯蔵

5.ブレンド

白州蒸溜所のモルトウイスキーのブレンド
白州蒸溜所のモルトウイスキーのブレンド

熟成を経て生まれた個性豊かなモルト原酒たちはブレンドされてシングルモルトウイスキー「白州」となる。

白州蒸溜所のモルトウイスキーの仕込の映像
白州蒸溜所のモルトウイスキーの仕込の映像

工場内へと移動する。
今は仕込みの時期ではないので仕込の映像を見る。

発酵槽

白州蒸溜所のモルトウイスキーの発酵槽
白州蒸溜所のモルトウイスキーの発酵槽の様子
白州蒸溜所のモルトウイスキーの発酵槽の様子

木樽で発酵を行うことにより、複雑で深みのある味わいが生まれる。
初期は同じ大きさだったが、今はサイズが違うとのこと。

サントリーでは複数の酵母を使用。
その他の原料や発酵条件によって異なる個性のウイスキー特有の香味成分を持つもろみがができあがる。

蒸留

白州蒸溜所のモルトウイスキーの蒸留の様子
白州蒸溜所のモルトウイスキーの蒸留の様子

再留

白州蒸溜所のモルトウイスキーの再留の様子
白州蒸溜所のモルトウイスキーの再留の様子
白州蒸溜所のモルトウイスキーの初留・再留の様子
白州蒸溜所のモルトウイスキーの初留・再留の様子

ポットスチル(蒸留窯)を使い、隣り合わせで蒸留をしている様子。
沸点の差を利用し、アルコールの香味を濃縮。
ニューポットの完成へ。

ニューポット

白州蒸溜所でできたニューポット
白州蒸溜所でできたニューポット

二度の蒸留(初留・再留)を経た、できたてのウイスキー。
アルコール度数65〜70%の無色透明だが、個性はこの時点で完成している。

貯蔵

蒸留の工程を見終わると、またまた、バスで貯蔵庫へ移動。
意外と長く乗っていたので、割と距離はあったように思える。

車体に鳥のイラストが描かれたサントリー白州蒸溜所のバス
車体に鳥のイラストが描かれたサントリー白州蒸溜所のバス
サントリー白州蒸溜所の貯蔵庫
サントリー白州蒸溜所の貯蔵庫

参加者驚愕。
部屋に入るとウイスキーの甘い香りで満たされていた。

現在、2万樽貯蔵。

貯蔵している間にも自然に減るとのこと。
「天使のわけまえ」としてスコットランドで言い伝えられている。

ウイスキー樽をつくるハンマー

ウイスキー樽をつくるハンマー
ウイスキー樽をつくるハンマー

人によってハンマーを使い勝手よく微調整している。

10年から20年使われているウイスキー樽

10年から20年使われているウイスキー樽
10年から20年使われているウイスキー樽

左から
バーレル 180リットル
ボッグスヘッド 230リットル
パンチョン 480リットル
スパニッシュオーク 480リットル

貯蔵庫の床

ウイスキーの樽の板で貼られた床
ウイスキーの樽の板で貼られた床

床も昔樽で使っていたものが使われている。
時期が違うので色もバラバラだが、それも味わいがある。

樽の中身

木の成分が溶け込んでいる。
温度調整をしていないので白州の空気も取り込んでいるのが特徴。

10年寝かせたウイスキー樽
10年寝かせたウイスキー樽

少しわかりずらいが左:10年以上 右:10年未満
色の違いが見て取れる。

ティスティング

工場、保管場所の見学が終わり、セントラルハウスに移動後、ようやくお楽しみのテイスティング。

サントリー白州蒸留所のテイスティングルーム
サントリー白州蒸留所のテイスティングルーム
白州蒸溜所内セントラルハウス BAR HAKUSHU
白州蒸溜所内セントラルハウス BAR HAKUSHU

テイスティングコーナーの様子

部屋の奥には未開封の白州がズラリ。

注意事項やこれからテイスティングするウイスキーなどの説明。

ティスティングの様子

有料の白州蒸溜所ものづくりツアーでは4種類のテイスティングができる。
左から順に飲んだ感想を記す。

ライトリーピーテッド原酒

アルコール度数43%。
常温の水でテイスティングした。
ふくよかさがでてみずみずしい。
わずかにスモーキーな感じ。

ピーテッド原酒

アルコール度数50%。
スモーキーでナッツ、クッキー・ビスケットのような甘味を感じる。

スパニッシュオーク樽原酒

アルコール度数50%。
焼きりんごの香りでブランデーっぽい。
甘酸っぱく、フルーティ。

白州

おいしく作れるハイボールの作り方をレクチャーされる。
大きめの氷で満たし、炭酸水を注ぎ、1回だけかき混ぜる。
ほのかな甘味とスモーキーさ。
今までのと比べるとかなりドライ。

テイスティングに合わせたつまみ

テイスティングに合わせていくつかのつまみが提供された。
やはりアテが欲しくなるのは酒飲みの性。


提供されたのは
▪️パスタスナックソルト味
▪️ピュアチョコレート
▪️樽燻スモークミックスナッツ

の3種類。
おいしくいただいた。

また、ウイスキー用のテイステインググラスもいだだき、至れりつくせりなツアー。

セントラルハウス テイスティングラウンジ

サントリー白州蒸留所のテイスティングラウンジ
サントリー白州蒸留所のテイスティングラウンジ

見学コースが終わり、さらに白州ブランドをはじめ希少なウイスキーの有料テイスティング & フードを楽しみたい方向けにラウンジがある。
ここでしか味わえない一杯を最後に堪能できる。

営業時間:10:00〜16:30(L.O 16:00)

サントリー白州蒸留所のテイスティングラウンジのキャッシュレス機器
サントリー白州蒸留所のテイスティングラウンジのキャッシュレス機器

基本はキャッシュレスだが、現金を使える端末もあった。

手順としては
①席をキープ
②券売機で注文(キャッシュレス / 現金)
③商品を受け取る
④グラスなどの返却

メニューはこんな感じ。


ソールドアウトになったものもあり、残念。

白州18年ストレート

白州蒸溜所でテイスティングした白州18年
白州蒸溜所でテイスティングした白州18年

白州18年
香りがマイルド
3,400円(税込)

白州蒸溜所 限定ウイスキー

白州蒸溜所でテイスティングした白州蒸溜所 限定ウイスキー
白州蒸溜所でテイスティングした白州蒸溜所 限定ウイスキー

ハムのかおり
バランス良い
12と18の中間な印象
800円(税込)

白州熟成体感セット

同じ製法で造られたウイスキーの熟成具合を飲み比べできるセット。
1,600円(税込)

白州蒸溜所でテイスティングした白州熟成体感セット
白州蒸溜所でテイスティングした白州熟成体感セット

ノンバリック

他と比べると軽い

白州12年

まろやか

白州18年

さらに濃い
チョコレート
香ばしい

セントラルハウス ギフトショップ

全てのツアーが終わり、バスの時間までの間魏ウトショップ内でお土産を購入。
来場記念にもぴったりな蒸溜所ならではのアイテムも多数取り揃えていた。
有料ツアー参加者のみが買うことのできるウイスキー(白州12年、響12年)もあり、財布と相談が必須だ。
(各種カード使用可)

営業時間:9:30〜17:30

サントリー白州蒸溜所ものづくりツアーのまとめ

至れり尽くせりな印象。さすが世界に誇るウイスキーメーカー。
ブランドを維持するためにいろいろな工夫が伺えた。
ウイスキー好きでなくても何回も出かけたい施設のひとつだ。

さらに希少なウイスキーを試飲できるツアーもあるのでそちらも楽しみだ。

おまけ 帰り際に寄った宇宙ビールタップルーム

ウイスキーだけでは物足りないので、小淵沢駅付近にある知る人ぞ知る穴場のワインバー「Booshino」に立ち寄る。

https://www.instagram.com/booshino_cave_et_bar_a_vins/


その後、リゾナーレ八ヶ岳へと向かい、北杜市付近のワイナリーも試飲。
さらに徒歩で行ける宇宙ビールまで向かい、酒漬けな一日を過ごした。

宇宙ドラゴン

グレープフルーツライクなビール。
無濾過で濁っているので飲みごたえもある。

GEISHA

ベリー味のスムージーのようなビール。
甘味と酸味のバランスが程よく、アルコール度は低いが後で足に来るので注意。

※2025年1月現在 個人の感想 2025年5月更新

この記事を書いた人

tiimo

生粋のめんどくさがりやのため、ズボラな家事な無印良品好きなヲッさん。 ストレスフリー生活したいがために整理収納アドバイザー 1級取得。2017年4月より生活提案ブログ更新中。日本ワイン好き。広告デザイナー。ワイフと娘ちゃんの3人家族。