日本という国土は発酵の土地でもある。日本全国47都道府県の発酵の歴史・文化などを俯瞰できる展示「FERMENTATION TOURISM NIPPON ~発酵から再発見する日本の旅~」を見学してきたのでレポートしたい。
FERMENTATION TOURISM NIPPON の概要
会 期:2019年4月26日(金)~2019年7月22日(月)
時 間:11:00~20:00(最終入館 19:30)
料 金:入場無料
FERMENTATION TOURISM NIPPONってどんな展示?
発酵デザイナーである小倉ヒラク氏によるキュレーションによる約10カ月に渡って47都道府県を巡る旅の中でその県らしい発酵食品(1県1品)を製造現場へ出かけた記録だ。
小倉ヒラク氏のプロフィール
1983年東京生まれ。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、甲州ワインで盛んな山梨・甲州市に発酵ラボを建設。「見えない発酵のはたらきを、デザインを通じて、見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家たちと商品開発・絵本・アニメ・ワークショップを開催。
2014年に「てまえみそのうた」でグッドデザイン賞受賞。
著書に「発酵文化人類学 /木楽舎 」などがある。
第4回 食生活ジャーナリスト大賞 「ジャーナリズム」部門大賞 受賞。
発酵食品のセレクトのお約束ごと
■発酵食品の種類がかぶらないこと
■ルールに忠実なこと
■景色と人にフォーカスすること
FERMENTATION TOURISM NIPPONの展示内容
会場には47都道府県の発酵食品の展示と壁面に掲げられたポスター、アクセントに現場から持ち込んだ発酵食品に使用する道具などが展示されていた。
会場に垂れ幕や展示品が並んでいる。
今更ながらにカルピスが発酵食品だったことを初めて知った。
2019年で100周年を迎えたロングライフデザインな食品。
フォトスポット
これで君も発酵人。
藍染
徳島県の藍染。藍染も発酵に関わったことを初めて知る。
漬物石
重しで空気を抜くとキレイに発酵する。
ローカル発酵食品マップ
47都道府県の発酵食品マップ。
こうじぶた
麹菌を育ててモコモコ育てていくための容器と顕微鏡で覗ける麹カビの展示。
地元の発酵食品について語るおばあちゃんのビデオ上映。
FERMENTATION TOURISM NIPPONの展示内容
カテゴリーが地域別での分け方ではなく「海」、「山」、「街」、「島」と4つのカテゴリーにわかれている。
実際の発酵食品の展示もあり、どんな発酵食品なのかすぐにわかるデザインの展示になっている。
※試食は不可
宮崎
あざら
マイナスをプラスに変える発酵錬金術。
佐賀
松芝漬け
捕鯨一族の執念が生んだ港の珍味。
秋田
ハタハタ
年に一度の熱狂から生まれる秋田のシンボル食。
富山
黒作り
イカスミで真っ黒なエキゾチック塩辛。
宮崎
むかでのり
日南海岸発! 前代未聞の海藻発酵レシピ。
石川
フグの卵巣糠漬け
微生物で解毒? 日本人の発酵への執念が生み出した珍味。
福井
サバのへしこ
へしこ × なれずし! サバの発酵最終形態。
愛知
八丁味噌
味噌汁の味は、その土地のプライド。
三重
たまり醤油
旨味の首都の味覚を支える、縁の下の力持ち。
広島
米酢
西の海運を制した尾道の産業基盤。
大分
うるか
鮎でつくるブルーチーズ 城下町のまるごと塩辛。
岐阜
アユのなれずし
まるごと醸す、川のテロワール。
兵庫
清酒
肉体労働の疲れを癒す力強く澄み切った酒。
神奈川
くずもち
川崎大師のめでたい発酵菓子。
群馬
焼きまんじゅう
待つ喜びが詰まった、群馬のソウルフード。
以前食べたことがあったが、けっこうボリューミー。
愛媛
いずみや
酢の美食大国から生まれたおから寿司。
静岡
潮かつお
大漁を願う海の幸を吊るす。
岡山
ママカリずし
大漁を告げる魚島の幸。
北海道
山漬け
北海道のルーツがまるごと発酵したサケ。
福岡
明太子
オープンソースが生み出した福岡のアメリカンドリーム。
奈良
古代から受け継がれる漬物文化の最高峰。
大阪
守口漬け
戦国大名が見出したなにわのローカル漬物。
京都
しば漬け
山間に吹く風が育てた京の漬けもの。
福島
三五漬け
麹大国のフェーバリット漬け床。
茨城
水戸納豆
鉄道開通とともに幕を開けた納豆大国の歴史。
香川
醤油
木桶の伝統が未来の多様性を生む。小豆島の醤油文化。
埼玉
しゃくし菜漬け
武甲山の魂を宿す、美しき白い漬物。
鳥取
神さまと人をつなぐ山の寿司。
栃木
たまり漬け
日々の食卓がキラキラ輝く、日光街道の名物みやげ。
和歌山
金山寺味噌
大陸ルーツの面影を残すおかず味噌。
岩手
雪納豆
雪にうめてつくる、陸奥の神秘納豆。
新潟
かんずり
雪原に咲く赤い花。秘伝の唐辛子の発酵レシピ。
青森
ごと
納豆 × 麹 ×乳酸菌の究極の発酵レシピ。
山梨
甲州ワイン
ブドウの丘の景観をつくる「甲州ワイン」。
長野
すんき漬け
塩を使わず、乳酸発酵の旨味を閉じ込めた漬け物。
山形
煎じきゅうり
蒸し暑い夏の食欲増進剤、きゅうりの摩訶不思議ピクルス。
山口
あまぎゃあ
山の村のささやかなお楽しみ。もち米を使った甘いお粥。
島根
津田カブ漬け
神の国のめでたい紅白の漬物。
熊本
あかど漬け
畑の馬肉? 阿蘇の土が醸された緋色の傑作。
高知
碁石茶
カビと乳酸菌でダブルで醸す、大陸アジアを感じる奇跡の茶。
徳島
阿波晩茶
爽やかな酸味で染みわたる、山の発酵茶。
鹿児島
なり
飢饉対策の切り札。トロピカル麹の衝撃。
東京
くさや
もったいない精神がガラパゴス進化を遂げた珍食の代名詞。
沖縄
豆腐よう
秘伝の琉球宮宮廷レシピが名産品に。南アジアの発酵チーズ。
番外編 青ヶ島
東京都から南に358kmに位置する島。減量も微生物も島の自給自足。
47都道府県別発酵食品の物販コーナー
展示してる47都道府県の発酵食品を販売していた。セレクトがマニアックすぎてこのエリアだけ良い意味での狂気の世界。
渋谷の中心で麹を買う。
冷蔵されたくさやなど。
47都道府県の厳選された醤油コーナー。
日本酒や甲州ワインなど。
山梨・大月に所在する笹一酒造の辛口本醸造のワンカップ。
FERMENTATION TOURISM NIPPONのまとめ
これは発酵を通して俯瞰する日本文化そのもの
海外ではあまりこのような発酵食品(チーズ、ワイン、ビール、ヨールグト以外)は見あたらない。47都道府県の空気中に存在している菌類が多種多様なため、日本独自の発展を果たしてきた。
d47Museumは写真撮影可能な展示場だ。展示を楽しんだあとにもゆっくりと写真で見直し、日本にロングライフデザインを垣間見ることができるめったにない珍しいミュージアムだ。
そんなミュージアムで開かれたからこそ、日本に根付く発酵文化をしっかりと知ることができた。同じことを個人でしようとすると膨大な時間とコストがかかるだろう。無料で観覧できるのもでデザインに対して真摯な姿勢を感じる。
※2019年9月現在 個人の感想 47都道県の発酵食品、キュレーター紹介文は展示より引用