日本ワイン:シーンを味わう #9

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シーンを味わう#9「バベットの晩餐会」ポスター

去る7月2日、甲府駅北口にあるD&デパートメント山梨フォーハーツカフェにて「シーンを味わう #9」が開かれた。

シーンを味わうとは?

2013年から開かれていて、今回で9回目。「物語」を題材にしたその日限りの特別なイベントだ。
老舗本屋の「春光堂」宮川大輔による物語の解説を堪能した後に、フードプランナー大木忍による印象的なシーンを再現した創作ディナーを味わう。合わせるワインはワインアドバイザー新田正明による料理と物語の両面からそのマリアージュを語る。

今回のテーマは「バベットの晩餐会」。
イサクディーネセンによるものだ。映画「愛と悲しみの果て」の原作者でもある。

 

開場は5時半。夏日なのでまだまだ明るい。受付を済ませそれぞれの席に着く。
テーブル上には料理とワインの解説・物語の引用が書かれた紙が設置してあった。6時になり、人が揃ったところで開始。
シーンを味わう#9「バベットの晩餐会」

春光堂書店による挨拶
この会の趣旨、なぜこの本を題材に選んだかなどなど。
説明を聞きながら、本に合わせたお酒が登場・乾杯。
同時にワインアドバイザーによる解説があった。
「岩井 トラディッション ワインカスク フィニッシュ」。
ウイスキーだが、本坊酒造「日之城カベルネ&メルロー」の樽により更に追加熟成させた一品との事で、物語の最初の1杯のイメージとあわせてある。まろやかで甘めなウイスキー。少し強いが、氷をいれて調節してよいとの事だったので少し薄めた。
IWAI traditional

料理が運ばれる。
本にも登場したウミガメのスープ。通常オードブルが先のようだが、物語に合わせてスープが先の登場だ。
ウミガメ自体は捕獲禁止なので代わりにスッポンにしている説明があった。

本の引用

将軍は一種のパニックに襲われ、グラスをあけた。(70頁)
シーンを味わう#9「バベットの晩餐会」 ブリミのデミトフ風
次にオードブル。「ブリニのデミドフ風」がだされる。

本の引用

「なんと、これはまさしくブリニのデミドフ風ではないか」彼は酔ったような眼差でテーブルの客たちをみまわした。みんなは楽しげで穏やかな顔つきをして坐っており、驚いてもいなければとりわけ満足しているといったようでもなく、この三十年のあいだ毎日同じような食事をしてきたとでもいうふうに、出されたブリニのデミドフ風を食べていた。(71頁)

自家製パンについていたキャビアみたいなものが美味しかった。

合わせたワインは「エチュード ルバイヤート2015」丸藤葡萄酒だ。
シーンを味わう#9「バベットの晩餐会」でだされたエチュードルバイヤート2015

しばらく談話。
夜も更け室内が暗くなり、テーブルのキャンドルに火が灯される。
メインである「うずらの石棺風パイ詰め」の登場。

本の引用

同席していたガリフェ大佐はカーユ・アン・サルコファージュと呼ばれているうずらの石棺風パイ詰めだと教えてくれた。大佐はこう話してくれた。この料理はいま自分たちが食事をしているレストランの特製で、その厨房のシェフをつとめている料理の達人の創意で作られたものだが、なんでもそのシェフは驚いたことに女性で、当代きっての料理の天才としてパリじゅうに知られているのだと説明してくれた。(74頁)

シーンを味わう#9「バベットの晩餐会」でだされたうずらの石窯風パイ

うずらは人生初の食材だ。赤ワインソースをつけて食べる。
フードプランナーによる解説はうずらが小さいので手づかみでがつがつたべて欲しいとの事。
台座のバイが肉汁を吸っていて美味しい。

合わせたワインは「ピノ・ノワール 2016」シャトージュン。
山地区自社畑産ピノ・ノワール及び菱山地区矢野氏栽培ピノ・ノワールを使用。
なかなか手に入らないないワインとの事。
シーンを味わう#9「バベットの晩餐会」で出されたシャトージュン ピノ・ノワール2016

おなかもおちついた所で、デザートの「ラム酒風味のサヴァラン チーズ添え」が登場。

本の引用

「みごとな葡萄ですな」すると隣の男は、幸せそうな微笑を見せながら、さりげなく民数記の一節を引いてこういった。「やがて一行はエシュコールの谷に着き、ひと房の葡萄の実る枝を切り取った。そしてふたりがかりでその房を棒で担いで運ばなければならなかった」(76頁)

シーンを味わう#9「バベットの晩餐会」で出されたブドウ

しっとりしていておいしいデザートだった。
供えのチーズとハチミツがうまくマッチ。葡萄もアクセントになっていた。

合わせたお酒は「周五郎のヴァン」中央葡萄酒

アドバイザーの説明によると…
作家 山本周五郎氏が生前愛飲した日本発本格シェリーの先駆け。
数年に亘る樽熟成、ソレラシステムにより醸し出される深い味わいの酒精強化ワインを宴の終焉を飾るデザートと共に味わい、楽しむ事こそがこの物語の本質を全うする事に繫がる。
シーンを味わう#9「バベットの晩餐会」で出された周五郎のヴァン

いくつか堪能した後、コーヒーがでる。
作者であるイサク・ディーネセンはアフリカでコーヒー農園を営む時期があった。
しかし経営は失敗。夫婦仲も破綻し、国へ帰る事となる。後に作家となり、その回想録が「アフリカの日々」に収録されている。
最後の最後まできちんと物語に合わせての登場だ。

 

まとめ

本をベースにいろんな角度から楽しめた。
解説もあるので読書会みたいな堅苦しい会でもないし、ワイン会の様に講釈を述べる人が正義でもない、ただ単純に食べ、飲み、隣同士の人たちと談笑する。バベットの晩餐会を完全再現とは行かなかったが、いろんな仕掛けもあり楽しめた。
本の題材によって料理やワインも変わるののでリピーターが多いのも頷ける。
次回は12月に開催される模様。

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この記事を書いた人

tiimo

40半ばのヲッサン。
夏は40℃以上、冬は雪と風が舞う盆地での生活をつづります。
地元系グラフィックデザイナー。自称甲州ワインエヴァンジェリスト。
2018年整理収納アドバイザー1級を取得。